犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、特にトイプードルやチワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリアなど小型犬に多く見られる足のトラブルです。

最近、愛犬が片足を上げて歩くようになった…。



散歩中に急に座り込むんだけど…。
――そんな変化に気付いた飼い主の多くが直面するのが、パテラという病気です。
膝蓋骨(=膝のお皿)が正常な位置から外れてしまうこの病気は、痛みや歩行異常だけでなく、進行すると愛犬の生活の質(QOL)そのものに大きな影響を及ぼします。
実際、「パテラ 症状」「犬 パテラ 手術」「膝蓋骨脱臼 グレード」「パテラ 予防」などのキーワードは、年間を通じて多くの飼い主が検索している悩みの種です。さらに「パテラ 費用」「パテラ 保険」「パテラ リハビリ」など、経済的な不安や術後ケアまで、知りたい情報は多岐に渡ります。
しかし、パテラは決して珍しい病気ではありません。早期発見と適切な治療・予防ケアによって、愛犬の将来を大きく変えることができます。本記事では、
- パテラ(膝蓋骨脱臼)の仕組みや原因
- 具体的な症状・グレード・診断方法
- 治療・手術・費用や保険の実態
- 日常でできる予防・再発防止策
- 実際の飼い主さんの体験談やQ&A
まで、獣医師監修情報と最新の知見をもとに、初めてでも理解できるように徹底解説します。愛犬の“歩く幸せ”を守るため、今知っておきたい全てをまとめました。
パテラ(膝蓋骨脱臼)とは?


パテラ(膝蓋骨脱臼)は、愛犬の「足をかばう」「急に座り込む」「歩き方が変わった」などのサインから発見されることが多い病気です。
とくにトイプードル、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリアなどの小型犬や超小型犬で発症率が高く、飼い主にとって決して他人事ではありません。ここでは、パテラの基本的な仕組みと、なぜ発症しやすいのかを詳しく解説します。
パテラのメカニズムと発生部位
膝蓋骨脱臼(Patellar Luxation)は、膝関節の中で膝蓋骨(パテラ=膝のお皿)が、本来の溝(大腿骨滑車溝)からずれたり、外れたりしてしまう状態です。
本来、膝蓋骨は膝関節の動きをスムーズにし、ジャンプや走る、座るといった動作を安定させる役割を持っています。
しかし、パテラを発症すると、膝蓋骨が正しい位置から逸脱し、膝が“外れる”ような感覚になります。このため、犬は歩行時に痛みや違和感を覚え、症状が進むと軟骨や関節周囲の組織も傷み、関節炎や他の足のトラブルを引き起こすことがあります。
小型犬・中型犬・大型犬での違い
パテラはどの犬種にも発症する可能性はありますが、とくに小型犬での発症が圧倒的に多いのが特徴です。
チワワ、トイプードル、ポメラニアン、パピヨン、ヨークシャーテリア、マルチーズ、ミニチュアダックスフンドなどはパテラ好発犬種として知られています。
一方で、大型犬では発症率が低いものの、重症化すると歩行困難や手術を要するケースもあり、注意が必要です。
発生率・遺伝的背景
ある保険会社の調査によると、小型犬のうち10〜20%前後が生涯で何らかの形でパテラを経験するという報告もあります(※出典:アニコム家庭どうぶつ白書2022年版)。
特に遺伝的素因が大きく、両親や兄弟にパテラ歴がある犬はリスクが高まります。ブリーダーやペットショップでの購入時に親犬の健康状態を確認することも大切です。
発症しやすい犬種一覧とその理由
パテラ好発犬種
- トイプードル
- チワワ
- ポメラニアン
- ヨークシャーテリア
- パピヨン
- マルチーズ
- シーズー
- ミニチュアダックスフンド
- ジャックラッセルテリア など
これらの犬種は体重が軽く、骨や関節のサイズが小さいため、膝蓋骨が外れやすい構造になっています。また、足が細く筋力が弱い、膝関節周辺の筋肉バランスが崩れやすいなどの特性もパテラの発症に関与します。
表:パテラが多い犬種ランキングと平均発症年齢(例)
順位 | 犬種 | 発症率(目安) | 平均発症年齢 |
---|---|---|---|
1 | トイプードル | 約20% | 1~3歳 |
2 | チワワ | 約18% | 1~3歳 |
3 | ポメラニアン | 約15% | 1~4歳 |
4 | ヨークシャーテリア | 約12% | 1~4歳 |
5 | パピヨン | 約10% | 1~4歳 |
6 | マルチーズ | 約8% | 2~5歳 |
7 | シーズー | 約5% | 2~5歳 |
パテラの症状と飼い主が気付くサイン


パテラ(膝蓋骨脱臼)は、発症初期では目立った痛みや異常が分かりにくいことも多く、日々の観察力が発見の鍵となります。
多くの飼い主が「たまたま片足を上げて歩いた」「少し歩き方がおかしい」といったささいな変化に気づいて受診し、初めてパテラと診断されるケースが少なくありません。
ここでは、パテラの典型的な症状から、日常で見逃しやすい細かなサインまで詳しく解説します。
歩き方・立ち方の異常
最もよく見られるサインは、歩き方の異常です。パテラの初期段階では、「急に片足だけを上げてケンケンする」「歩くときだけ足を引きずる」「特定のタイミング(起き上がった直後や走った直後など)でだけ歩き方がおかしくなる」といった行動が多く見られます。これは膝蓋骨が一時的に外れてしまい、痛みや違和感から足を使いたがらなくなるためです。
また、じっと立っているときに片足を浮かせている、すぐに座り込むといった行動も、初期のパテラのサインであることが多いです。
足を浮かせて歩く/ケンケンする動き
膝蓋骨がずれることで、犬は足を正常に地面につけることができなくなり、まるでケンケンをするような動きになります。特に、興奮して走り出した直後や段差を降りた後など、一時的に後ろ足を上げたままになる様子が特徴的です。
さらに重症化してくると、膝が外れたまま戻らず、足を使わずに生活するようになってしまうこともあります。こうした状態が長く続くと、筋力が低下し、他の関節や骨への負担も大きくなってしまいます。
重症化した場合のサイン
パテラが進行し、グレードが上がると、下記のような重い症状も見られるようになります。
- 歩行そのものが困難になる
- 脱臼したまま足が地面につかなくなる
- 関節を動かすと「カクカク」と音がする
- 膝周辺が腫れている・痛がって触らせない
- 長時間の運動や散歩を嫌がる、疲れやすい
特に、「急に歩けなくなった」「足を全く使わなくなった」場合は、すぐに動物病院で診察を受けることが大切です。放置すると関節炎や靱帯断裂、骨の変形、慢性の痛みにつながります。
家庭でできる毎日のセルフチェック方法
パテラの早期発見には、日々の観察と簡単なセルフチェックが有効です。以下のポイントを意識して愛犬の様子をチェックしましょう。
- 散歩のときの歩き方(片足を浮かせていないか)
- 階段や段差の昇り降りを嫌がらないか
- 立ち上がるときや座るときに違和感がないか
- 足をなめる・かじるなどの行動が増えていないか
- 触ったときに膝を痛がる・拒否する仕草はないか
また、動画や写真で日々の様子を記録しておくと、病院受診時に獣医師に症状を伝えやすくなります。
イラストでわかる「正常」と「異常」の比較


- 正常な歩行は四肢がリズミカルに動き、座った姿勢でも両足が均等に体重を支えています。
- 異常な歩行(パテラ初期~重度)は、後ろ足を交互に浮かせる、片足だけを使わず跳ねる、立ったとき片足が浮いているなどが特徴です。
表:症状グレード別の主な特徴と注意点
グレード | 症状の特徴 | 注意点・推奨対応 |
---|---|---|
1 | 膝蓋骨が触診で簡単に外れるが自然に戻る。 痛みや歩行異常はほぼなし | 経過観察・定期チェック |
2 | 膝蓋骨が時々外れ、 歩行異常やケンケン歩行が出る | 生活環境の見直し・体重管理 |
3 | 膝蓋骨が常時外れがちで自然に戻りにくい。 明らかな歩行異常あり | 内科・外科的治療を検討 |
4 | 常時脱臼し手で戻せない。 歩行困難、足を使えなくなる | 手術が推奨。進行防止・疼痛管理必須 |
早期発見・早期治療の重要性
パテラは進行性の疾患であり、早期発見・早期対応が愛犬の快適な生活を守るカギです。少しでも「おかしいな?」と感じたら、自己判断せず必ず動物病院で診察を受けることが大切です。
パテラのグレード(等級)と診断方法


パテラ(膝蓋骨脱臼)は、その重症度によって「グレード(等級)」1〜4に分類されます。グレードごとに症状や治療方針が大きく異なるため、飼い主が愛犬の状態を正確に把握することが重要です。
ここではパテラのグレード分類、診断の流れ、セルフチェックのポイントまで詳しく解説します。
パテラのグレード1~4の違い
パテラのグレード分類は、主に膝蓋骨がどれだけ外れやすいか、そして自然に元に戻るかどうかで決まります。
グレード1~2は比較的軽度、グレード3~4は重度とされます。
グレード1(最も軽度)
- 膝蓋骨が触診で簡単に外れるが、すぐに元の位置に戻る
- 痛みや歩行異常はほぼない
- 本人も気づかないケースが多い
- 進行しない場合は経過観察のみでOK
グレード2
- 日常動作や運動の際に膝蓋骨が外れ、時折ケンケン歩行や足を浮かせる
- 自然に元に戻ることも多いが、外れたままになることもある
- 少しずつ症状が進行することも
- 生活環境の見直しや体重管理が重要
グレード3
- 膝蓋骨が常に外れている、または簡単に外れ戻りにくい
- 明らかな歩行異常や跛行が見られる
- 関節の変形や筋肉の萎縮が進みやすい
- 内科的治療だけでは限界があり、外科手術が検討される
グレード4
- 膝蓋骨が常に脱臼しており、手で戻してもすぐ外れる、または戻らない
- 足をほとんど使えず、歩行困難・持続的な痛み
- 関節の変形、筋力低下、他の足への負担増大
- 外科的治療(手術)が推奨される
表:パテラグレード別 症状・治療法・費用目安まとめ
グレード | 主な症状 | 推奨治療・対策 | 費用目安(治療/手術) |
---|---|---|---|
1 | 無症状、時折外れるがすぐ戻る | 経過観察・定期検診 | 診察料のみ |
2 | 歩行異常、時々足を浮かせる | 環境改善・体重管理 | 診察+投薬1万〜3万円/年 |
3 | 常時脱臼、明らかな歩行障害 | 内科治療+手術検討 | 手術20〜35万円前後 |
4 | 脱臼固定、歩行困難 | 手術が推奨 | 手術30万円〜 |
※費用は地域・病院・症例により大きく異なります。
動物病院での診断プロセス
パテラは動物病院での診断が必須です。主な診断プロセスは以下の通りです。
問診・視診
飼い主への症状ヒアリング、歩行や立ち方を観察
触診
獣医師が膝関節を丁寧に触って、膝蓋骨がどの程度外れるか、戻るかを確認
歩行観察・動画解析
実際に歩かせてみて、ケンケン歩行や異常がないか観察(動画持参推奨)
レントゲン検査
骨や関節の変形、脱臼状態、関節炎の有無を精密にチェック
追加検査
重症例や手術検討時にはMRIや血液検査を追加することも
診断結果はグレードだけでなく、症状の進行具合・生活への影響も考慮して治療方針が決まります。
飼い主が知っておきたいセルフチェック
日常の中でも、以下のポイントでセルフチェックが可能です。
- 散歩や運動時の歩き方(ケンケン歩行や足の浮き)
- 座り方・立ち上がり方に違和感がないか
- 足を触ったときに嫌がったり痛がったりしないか
- 階段や段差を避ける、ジャンプを嫌がるなどの変化
もし違和感や異常を感じた場合は、できるだけ早く動物病院で専門的な診断を受けましょう。パテラは“進行性の疾患”のため、早期対応が愛犬の足と生活を守ります。
パテラの原因と発症リスク


犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、なぜ発症する犬としない犬がいるのでしょうか。
遺伝や犬種特性、成長期の環境、生活スタイルや飼い主のケアまで、さまざまなリスク因子が複雑に関係しています。ここでは、パテラの主な原因と発症リスクについて詳しく解説します。
遺伝的要因と犬種特性
パテラは遺伝性疾患の一つとされています。
特にトイプードル、チワワ、ポメラニアン、パピヨン、ヨークシャーテリア、マルチーズなどの小型犬で発症率が高く、これらの犬種では親犬から子犬へと膝蓋骨や関節の弱さが受け継がれていることが多いです。
ブリーダーが親犬のパテラ有無をきちんと管理していない場合、子犬の世代でパテラのリスクが高まります。
近年はペットブームや人気犬種の乱繁殖により、遺伝的な疾患を持った犬が市場に多く流通してしまうケースも報告されています。信頼できるブリーダーや健康管理に力を入れているペットショップから迎えることが、パテラ予防の第一歩となります。
成長期の骨発達と影響
生後数か月~1歳半頃までの成長期は、骨や関節が急速に発達する時期です。
この期間に栄養バランスが悪かったり、激しい運動や過度なジャンプ、逆に運動不足が続くと、関節や靱帯に負担がかかりやすくなります。
特にパテラ好発犬種は骨そのものが細く、膝関節の溝が浅い、筋肉のバランスが崩れやすいという構造的な弱点があります。成長期に無理な負荷をかけないよう、飼い主が注意深く見守ることが大切です。
生活環境(滑りやすい床・段差・過度なジャンプ等)
家庭での環境もパテラ発症に大きな影響を与えます。
住まいの環境 | 影響 |
---|---|
滑りやすいフローリングやタイル床 | 滑って転ぶことで膝に余計な負荷がかかる |
階段や段差の多い家 | ジャンプや昇降のたびに膝にストレスがかかる |
高いソファやベッドへの昇降 | 足への衝撃を繰り返す |
こうした生活習慣の積み重ねが、パテラのリスクを高めます。特に小型犬は骨や関節がデリケートなため、滑り止めマットを敷く、ステップを設置する、段差を減らすなどの工夫が重要です。
肥満や栄養バランスとの関係
体重の増加は関節への負担を増やし、パテラ発症や悪化のリスクを大きく高めます。
特に避妊・去勢手術後は代謝が落ちやすく、太りやすくなるため注意が必要です。肥満は膝だけでなく、全身の関節疾患や糖尿病、心疾患のリスクも伴います。
また、カルシウムやタンパク質、ビタミンDなど、骨や関節の健康維持に必要な栄養素の不足も問題です。獣医師やペット栄養士と相談し、年齢・犬種・体重に合った適切なフードやサプリメントを選びましょう。
多頭飼い・家庭環境との関連
多頭飼いの場合、遊びの中での衝突やジャンプ、過度な運動が増え、知らず知らずのうちに膝に負担がかかることがあります。
また、家庭内で“活発すぎる”先住犬がいると、追いかけっこやジャンプが日常化してしまうことも。家庭環境に応じて、運動量や遊び方をコントロールし、必要に応じて仕切りやサークルを活用しましょう。
コラム:小型犬以外のパテラ発症例
発症リスクを減らすために
- 子犬の購入時に両親犬の健康状態(遺伝性疾患歴)を確認する
- 成長期の栄養と運動バランスに注意する
- 家の床・段差・家具配置など、膝への負担を減らす工夫を徹底する
- 適正体重を維持し、肥満を予防する
こうした生活環境・飼い方の見直しが、愛犬の一生を左右します。
パテラの治療法(内科・外科・手術)


犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、症状のグレードや進行度、年齢や生活スタイルによって、治療法が大きく異なります。
グレード1~2の軽度なら家庭ケアや内科的治療、グレード3~4の重度や進行例では外科手術が推奨される場合も少なくありません。
ここでは、それぞれの治療法の選択肢とそのメリット・デメリット、実際の流れや飼い主の心構えについて詳しく解説します。
グレード別の基本治療方針
グレード1~2(軽度)
- 経過観察・家庭ケア
- 痛みや歩行異常がなく、膝蓋骨が一時的に外れる程度であれば、まずは定期的な診察と経過観察が基本となります。
- 内科的治療
- サプリメント(グルコサミン・コンドロイチンなど)で関節の健康をサポートしたり、体重管理や筋力強化のための軽い運動、フローリング対策など家庭でのケアが重視されます。
- 投薬治療
- 痛みがある場合は消炎鎮痛剤が処方されることもありますが、長期投薬は副作用もあるため、必ず獣医師の指示を守りましょう。
グレード3~4(中〜重度)
- 外科手術
- 膝蓋骨が常時外れていたり、歩行障害や痛みが強い場合は、根本治療として手術が選択されます。手術には複数の術式(滑車溝の深掘り、膝蓋骨を正しい位置に固定するなど)があり、犬の状態や病院の設備によって最適な方法が異なります。
- リハビリ・術後管理
- 手術後は安静が必要ですが、適切なリハビリを行うことで筋力や可動域を回復させ、再発リスクを下げることができます。
手術治療の種類・流れ
手術は犬の状態や年齢、他の関節の状態などを考慮して行われます。主な手術法は以下の通りです。
- 滑車溝形成術
- 膝蓋骨がはまる溝(滑車溝)を深くして、膝蓋骨が外れにくくする手術。小型犬に多い術式です。
- 脛骨粗面転位術
- 膝蓋骨に付着している靱帯の位置を骨ごと移動させ、膝蓋骨を正しい方向に固定する方法。中~重度の症例でよく用いられます。
- 関節包縫縮術・弛緩術
- 関節の内外の靭帯や筋肉のバランスを調整して、膝蓋骨が正常位置に戻りやすくする術式。
手術の流れ
- 術前検査(血液・レントゲンなど)で全身状態をチェック
- 全身麻酔下で手術を実施(1時間~数時間)
- 入院(1日~1週間ほど)
- 術後管理(安静+リハビリ)を経て退院
手術しない場合のリスク・経過観察
グレード1~2で症状がほとんどない場合は、手術をせずに経過観察で問題ないケースも多いです。しかし、進行や悪化が認められる場合は注意が必要です。
- 膝関節の変形や関節炎、他の靭帯断裂(二次障害)のリスク
- 慢性的な痛みや生活の質(QOL)の低下
- 他足への負担増加、バランスの崩れ
「痛み・歩行障害・進行」が認められた場合は、早めに獣医師と治療方針を相談しましょう。
サプリメントやリハビリの効果と注意点
サプリメント(グルコサミン・コンドロイチン・MSM・オメガ3脂肪酸など)は、軟骨や関節の健康維持をサポートします。日々の運動・筋トレ(適度な散歩や後ろ足の筋力強化)、滑り止めマットの活用なども有効です。
注意点
- サプリメントは治療の“補助”であり、進行したパテラを治すものではありません
- リハビリは自己流で無理をさせず、獣医師や動物理学療法士の指導を受けること
実際の手術例・成功率・失敗例
- 小型犬のパテラ手術は近年非常に一般的で、成功率は90%以上とされています(※合併症や再発リスクはゼロではありません)
- 手術後の回復は個体差があり、体重管理・家庭でのケアが重要です
- 稀に、術後感染・骨折・膝蓋骨の再脱臼・プレートやピンのトラブルなどが起こることも
名医・動物病院選びのコツ
- パテラ手術の経験豊富な獣医師、整形外科を得意とする動物病院を選ぶこと
- 術後リハビリやケアの相談ができる病院がおすすめ
- セカンドオピニオンや複数病院の比較も重要
手術を決断した飼い主の声



歩けなくなるのが怖くて手術を決断。術後はリハビリに苦労したが、今では元気に走り回っています。



経済的には負担だったが、愛犬がまた楽しそうに散歩できるようになり、本当に良かった。
パテラの手術費用・保険・経済的負担


パテラ(膝蓋骨脱臼)の治療、特に手術を選択した場合、飼い主にとっては経済的な負担が大きな悩みとなります。
近年はペット保険の普及やローン、各種補助制度なども充実していますが、費用の現実や支払い方法、事前に知っておきたい注意点を詳しく解説します。
手術費用の全国相場・動物病院ごとの違い
パテラ手術の費用は、手術の内容・重症度・地域・病院設備・麻酔や入院日数によって大きく異なります。
一般的な小型犬のパテラ手術の場合、1肢につき20万円~40万円程度が相場です(2025年時点)。
両足同時、重度、再手術や複雑な症例では50万円を超える場合もあります。
- 手術料
- 麻酔料
- 術前検査(血液・レントゲン・心電図など)
- 入院・看護費
- 術後リハビリ費用
- 投薬・抜糸等のアフターケア
また、都市部や専門動物病院は費用が高めの傾向がありますが、経験豊富な整形外科医が在籍しているか、リハビリ体制が整っているかなど、単なる金額だけでなく“内容の質”も比較が大切です。
ペット保険の適用範囲・補償例
多くのペット保険会社では、パテラ手術に関して保険適用されるプランを用意しています。
ただし、「先天性・遺伝性疾患」を理由に加入時期や契約内容によっては補償対象外となる場合もあるので注意が必要です。
- 加入前に既にパテラを指摘されている場合は補償対象外が多い
- 若齢時の早期加入であれば補償されるケースが増加
- 通院・入院・手術の全てに補償がつくプランを選ぶと安心
- 補償率(例:70%・90%など)や年間支払い限度額も要確認
保険未加入の場合の負担軽減策
ペット保険未加入、または補償対象外の場合、費用は全額自己負担となります。負担を少しでも軽くする方法は以下になります。
- 動物病院の分割払い・ローン制度の活用
- 最近は手術費の分割払いを認めている動物病院も増えています。
- クレジットカード支払い
- 自治体のペット医療補助制度の確認
- 一部の自治体では条件付きで補助金制度がある場合も
- 手術費用の見積もりを複数病院で比較
- 病院によって大きく異なるため、相見積もりは有効です
多頭飼い家庭の費用リスクと工夫
多頭飼いの場合、複数の犬が同じ遺伝的リスクを持つこともあります。2頭同時、または時期をずらして手術が必要になるケースも。
ペット保険は頭数分の契約が必要となるため、家計管理や緊急時の備えも考えておきましょう。
事前にできる「経済的備え」とは?
- 子犬の頃からペット保険に加入する
- 毎月少額ずつ「ペット貯金」を積み立てる
- 万が一の時は家族・親族にも相談できる体制を作っておく
- 契約前に保険内容をよく理解し、「パテラ補償」の有無を必ず確認する
コラム:安さだけで病院を選ばない
術後ケア・リハビリ・再発防止


パテラの手術や内科治療を受けた後、愛犬の本当の“健康回復”はここからがスタートです。
術後のケアやリハビリは、手術の成功率を高めるだけでなく、再発防止や長期的なQOL(生活の質)向上のためにも極めて重要です。
この章では、術後の過ごし方、家庭でできるリハビリ、再発防止の具体策まで、実践的なポイントを詳しく解説します。
術後の安静とケージレスト
手術後しばらくは、安静第一が原則です。獣医師の指示に従い、
- 必要に応じてケージレスト(狭いスペースで安静に過ごさせる)
- ジャンプや階段、激しい運動を避ける
- 散歩はリードで短時間・平坦な道を選ぶ
抜糸や傷口の状態、歩行が安定するまで無理をさせず、焦らずゆっくり回復を見守りましょう。
家庭でできるリハビリ方法
術後2~3週間を過ぎ、獣医師の許可が出たら軽いリハビリが重要になります。
基本的な家庭リハビリの一例
- マッサージ
- 太ももやふくらはぎの筋肉をやさしくもみほぐして血流を促進。
- ストレッチ
- 膝関節をゆっくりと曲げ伸ばしして可動域を広げる(無理は禁物)。
- バランスボール運動
- 体幹や足の筋力を鍛えるバランスボールやクッションを使った遊び。
- 短時間のゆっくり散歩
- 平坦な場所で徐々に歩行距離を増やす。
リハビリは“やりすぎ”や“自己流”は危険です。必ず獣医師や動物リハビリ専門家の指導のもとで行いましょう。
獣医師指導のもとでのリハビリ
動物病院やリハビリ専門施設では、
- 水中トレッドミル(浮力で足に優しく筋トレできる)
- 電気刺激療法
- レーザー治療
など、本格的なリハビリプログラムも用意されています。通院リハビリは経済的負担もありますが、重度の症例やシニア犬には特に効果的です。
散歩・運動の再開時期と注意点
- 術後1か月程度は無理な運動厳禁
- 回復状況に応じて徐々に運動量を増やす
- ソファやベッドへのジャンプ・階段昇降はできるだけ控える
- 滑りやすい床は滑り止めマットでカバー
術後の運動再開は「痛みがない・歩き方が安定している・傷口の治りが良い」が条件です。不安があればすぐに獣医師に相談しましょう。
サプリメント活用のポイント
- グルコサミン、コンドロイチン、オメガ3脂肪酸など、関節サポート系サプリが再発予防や健康維持に役立ちます。
- ただし「サプリメントだけで治る」わけではないので、あくまで補助的に利用しましょう。
- サプリは体質や持病によって合う・合わないがあるため、導入前に獣医師へ相談を。
再発防止のためにできる生活習慣
- 適正体重の維持(肥満は再発リスク大)
- 毎日の適度な運動
- 家の中の滑り止め・段差対策の徹底
- ソファやベッドへの昇降に専用ステップを設置
- 多頭飼いの場合は遊びのコントロールや個別のケアを意識
パテラは再発しやすい疾患のため、油断せず、日常の小さな工夫を積み重ねましょう。
飼い主の心構え
愛犬の回復を焦るあまり「早く走らせたい」「元気そうだからもう大丈夫」と思いがちですが、無理な運動やケアの“自己流”は悪化や再発の原因となります。
回復までの期間は個体差があります。焦らず、「獣医師の指示を守り、愛犬のペースを大切にする」ことが最大のサポートです。
パテラの予防法・家庭でできるケア


パテラ(膝蓋骨脱臼)は、遺伝や犬種特性も関与するため「絶対に予防できる病気」ではありませんが、日々の生活環境や飼い主の工夫によって発症リスクや進行を大幅に減らすことができます。
ここでは、今日からできる具体的なパテラ予防法・ケアのポイントをわかりやすく解説します。
滑りにくい床材やマットの活用
家庭内での“滑りやすさ”は、小型犬の膝関節に大きな負担をかけます。
- フローリングやタイル床には滑り止めマットやカーペットを敷く
- 特に、リビングから廊下・階段・玄関など、犬がよく移動する動線上には滑りにくい素材を選びましょう
- マットは「クッション性」「掃除のしやすさ」「ズレにくさ」を重視
滑りやすい場所は思わぬ転倒やジャンプを誘発し、膝蓋骨に過度なストレスを与えます。日常の“プチリフォーム”が、愛犬の足を守る第一歩です。
適切な体重管理と食事
肥満はパテラだけでなく全身の関節病の最大リスクです。
- 食事の量・カロリーを年齢・体型・活動量に応じて調整
- おやつのあげ過ぎ・人間の食べ物を与える習慣はNG
- ドッグフードは「関節サポート成分配合」「低脂肪・高タンパク」などを意識
- 定期的に体重を測り、標準体重をキープ
去勢・避妊手術後やシニア期は特に太りやすくなるため、フードの見直しと運動習慣をセットで管理しましょう。
適度な運動と生活環境の工夫
- 激しいジャンプや急なダッシュ、階段の上り下りはできるだけ避ける
- 散歩は平坦な道を選び、ゆっくりとしたペースで毎日続ける
- 家庭内での「段差解消」「ステップ設置」も膝への負担軽減に効果的
「走らせない=運動不足」にならないように、
- 短時間でも毎日継続する
- 筋力アップ目的の簡単なトレーニング(座った状態からの立ち上がり反復など)
もおすすめです。
サプリメント・リハビリ・定期健康診断の活用
- グルコサミンやコンドロイチン、オメガ3脂肪酸など関節ケア系サプリの導入は、特に遺伝的リスクが高い犬種や加齢犬に有効
- 気になる症状がなくても「年1回の健康診断」「獣医師による関節チェック」を習慣化しましょう
- 早期発見が進行防止・重症化回避の鍵です
家庭でできるパテラ予防チェックリスト
予防項目 | チェックポイント例 | 頻度 |
---|---|---|
床の滑り止め | フローリング・廊下・階段にマット設置 | 常時 |
体重管理 | 月1回は体重測定/食事量見直し | 月1~毎日 |
運動と散歩 | 毎日散歩/急なダッシュやジャンプを避ける | 毎日 |
食事・おやつ | 関節サポートフード/おやつは控えめ | 毎日 |
定期健診 | 年1回は動物病院で関節チェック | 年1回 |
家具・段差 | 高いベッドやソファはステップ・スロープ設置 | 設置・日常管理 |
多頭飼いの場合の遊び方 | 激しいプロレス遊び・追いかけっこに注意 | 日常的 |
家庭でできる「小さな工夫」が一生を守る
パテラの予防に「絶対」はありませんが、飼い主の日々の観察と環境づくりが最良の対策です。症状が出てから慌てるのではなく、今からできる“ちょっとした見直し”を積み重ねていきましょう。
パテラと犬のQOL(生活の質)
パテラ(膝蓋骨脱臼)は、単なる「膝の脱臼」だけでなく、愛犬の日常生活の質=QOL(Quality of Life)に深く関わる病気です。
痛みや歩行障害はもちろん、運動や遊びの制限、心のストレスや自信の喪失にもつながるため、QOLを守るための視点がとても大切です。
パテラが愛犬の心身に与える影響
パテラを発症すると、
- 散歩や遊びの途中で足を引きずる・急に止まる
- 段差や階段を避けるようになる
- 家の中でも「走らなくなる」「よく座る・横になる」など、活動量が減る
これらは見た目以上に犬の“自信の低下”や“楽しみの減少”につながります。さらに、痛みが慢性化すると性格の変化(怒りっぽくなる・元気がなくなる)や、食欲・睡眠リズムの乱れ、うつ傾向を示す犬もいます。
適切なケアでQOLを守るコツ
- 痛みや違和感を感じさせないための早期治療・予防
- 手術やリハビリを経て「また歩ける・遊べる」喜びを愛犬に経験させる
- 運動制限中も「頭を使う遊び」「知育玩具」などで精神的な充足感を与える
- 新しい家族や他のペットとのふれあいを増やすことで、社会性や安心感をサポート
何よりも「できないこと」より「できること」に目を向けるのが、飼い主としての大切な姿勢です。
家族としてできる精神的サポート
犬は飼い主の表情や感情にとても敏感です。「また歩けるようになるよ」「大丈夫だよ」と明るく声をかけ、必要以上に神経質にならないことも大切です。
術後や治療中は特にスキンシップや褒めることを意識し、回復のペースを尊重してあげましょう。
また、SNSや同じ悩みを持つ飼い主コミュニティに参加し、情報共有や励まし合いも精神的な負担軽減につながります。
コラム:高齢犬や他の持病を持つ犬のQOL
飼い主体験談・実際の声


実際にパテラ(膝蓋骨脱臼)を経験した飼い主の声や体験談は、これから同じ悩みに直面する飼い主にとって非常に心強い参考となります。
初期発見のきっかけや治療の決断、術後の苦労や工夫、また後悔や“やってよかった”ことなど、リアルな声を通して現実のパテラ対策を感じてください。
【体験談1】初期発見のきっかけと「すぐ病院へ行って良かった」
うちのトイプードルは、2歳頃から時々後ろ足を浮かせるようになりました。
最初は『ちょっと足をひねったかな?』くらいにしか思っていませんでしたが、数日後に散歩中に何度もケンケンする様子を見て心配に。
すぐに動物病院を受診したところ、グレード2のパテラと診断されました。幸い、まだ進行していなかったので手術にはならず、体重管理と滑り止めマットの設置を徹底。
今では普段通りに元気いっぱい走り回っています。早めに受診して本当に良かったです。
【体験談2】手術を決断した理由と術後の生活
愛犬(チワワ)は、1歳半でグレード3のパテラと診断されました。
家では片足を浮かせていることが増え、痛そうな様子もあったため、思い切って手術を決断。
手術費用は高額でしたが、ペット保険のおかげで負担はだいぶ軽減できました。術後1週間ほどは安静を守るのが大変でしたが、2か月目からリハビリも開始し、徐々に散歩もできるように。
今では以前よりも元気に遊んでくれています。最初は不安も多かったですが、獣医師と相談しながら乗り越えられました。
【体験談3】シニア犬とパテラ、手術しない選択
うちのミニチュアダックスフンドは10歳でグレード2のパテラと診断されました。
年齢的なリスクも考えて手術は選択せず、サプリメントと日常のケア(滑り止めマット、ジャンプの制限、体重管理)で経過観察中です。
毎日短時間の散歩で筋力を落とさないように心掛けています。おかげで、ここ数年は大きな悪化もなく元気に過ごしています。手術だけが正解ではないと実感しています。
【体験談4】後悔したこと・やってよかったこと
実は、最初に足の異変に気付いた時、しばらく様子を見てしまいました。
今思えば、すぐに病院で診てもらえばよかったと後悔しています。
症状が進んでからの治療は、犬にとっても負担が大きくなってしまいます。一方で、術後は毎日のリハビリや家族全員で協力しながらのケアを続けたことで、愛犬との絆も深まりました。
これからパテラで悩む飼い主さんには、“少しでも異変を感じたら早めに動物病院へ”と伝えたいです。
他の飼い主さんへのアドバイス
- 「どんな治療法を選ぶにしても、愛犬の個性や家族の生活スタイルに合った選択が大切です。」
- 「焦らず、でも不安を抱えたまま放置しないこと。獣医師に相談するだけでも心が軽くなります。」
- 「SNSやネットの体験談も参考になりますが、最終判断は“その子その子の状態”を見て決めましょう。」
体験談のまとめ
パテラは決して珍しい疾患ではありませんが、「早期発見・早期対応」「家族みんなでの協力」「適切な情報収集」が、愛犬とより良い生活を送るための大きなポイントです。
実体験を通して学んだ“リアルな声”は、何よりも参考になるはずです。
よくある質問(FAQ)


犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)については、診断時・治療検討中・術後や経過観察中に、たくさんの疑問や不安が生まれます。
ここでは、実際に飼い主さんから寄せられることが多い質問と、その回答をQ&A形式でまとめます。
他にも不安や疑問があれば、遠慮なく獣医師や専門スタッフに相談しましょう。最新の知見や経験から、あなたと愛犬に最適なアドバイスをもらうことができます。
まとめ|愛犬の足を守るためにできること
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)は、小型犬を中心に多くの家庭で悩みの種となっている疾患です。しかし、早期発見と適切な治療・予防ケアによって、愛犬の健康寿命やQOL(生活の質)を大きく伸ばすことができます。
パテラは「遺伝的な要素」「犬種特性」「生活環境」「体重管理」など、複数の要因が重なって発症・進行します。
日々の観察と細やかなケア、滑り止めや段差解消などの環境整備、体重コントロール、適度な運動と定期的な健康診断は、最大の予防策です。
また、異変に気付いた時には「様子見」せず、できるだけ早めに動物病院での診察・相談を。手術が必要な場合も、リハビリや術後のケアを丁寧に続けることで、多くの犬が元気に走り回る生活を取り戻せています。
家族全員が協力し合い、愛犬の個性やペースを尊重しながら、“できることを積み重ねる”姿勢こそが最良のサポートです。本記事が、あなたと愛犬がこれからも健やかに暮らすヒントとなれば幸いです。
参考文献・専門サイト
- 日本獣医師会「犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)」
- 一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)
- いぬのきもちWeb(獣医師監修)
- アニコム損害保険「家庭どうぶつ白書」
- 動物病院・整形外科専門医監修書籍
- ペット保険各社パンフレット・ウェブサイト