ダックスフンドはそのユニークな胴長短足の体型と、愛嬌たっぷりの性格で世界中の飼い主に親しまれています。
しかし、その特徴的な体型は健康リスクとも表裏一体であり、他の犬種に比べて発症しやすい特有の病気がいくつも存在します。
とくに「椎間板ヘルニア」「 肥満」「歯周病」「皮膚病」「外耳炎」は、健康や飼育を考える上で避けて通れない重要なテーマです。
本記事では、ダックスフンドに多い主要な病気の全体像から、発症リスクの比較、予防と早期発見のための具体的なポイントまで、初心者にもわかりやすく、かつ獣医療現場で実践されている最新の知見をもとに徹底解説します。
ダックスフンドがかかりやすい主要な病気【全体像とリスク比較】

ダックスフンド特有の体型がもたらす「病気のリスク構造」
ダックスフンドは胴が長く、足が短いという“独特の体型”をしています。
もともとはアナグマ猟のために穴に潜りやすく改良されたものですが、この体型こそが現代ダックスフンドの健康リスクの「根本原因」といえます。
脊椎(背骨)にかかる負担が大きいことから、「椎間板ヘルニア」は他犬種より格段に発症率が高く、また足腰や関節への負担から運動障害や慢性的な痛みが出ることも珍しくありません。
さらに、胴体の比率が長い分「肥満」になると負担が急増し、運動不足や食事管理の失敗も「病気の引き金」になりやすい特徴があります。加えて、被毛や皮膚、耳の構造も独特なため、「皮膚病」「外耳炎」などのトラブルも多発します。
【ダックスフンドの病気リスク比較表】
病名 | 主な原因 | 発症リスク(目安) | 代表的症状 | 予防・注意点 |
---|---|---|---|---|
椎間板ヘルニア | 胴長短足、肥満、ジャンプ、加齢 | 非常に高い(小型犬中トップ) | 歩行障害、麻痺、痛み | 段差回避・体重管理 |
肥満 | 食べ過ぎ、運動不足 | 高い | 動きが鈍い、呼吸不全 | 適正給餌・定期運動 |
歯周病 | 歯石、歯磨き不足 | 高い | 口臭、歯茎の腫れ、歯の脱落 | 毎日の歯磨き・定期健診 |
皮膚病(アレルギー等) | 皮膚が薄い、アレルゲン、湿気 | やや高い | かゆみ、赤み、脱毛 | 保湿・清潔・適切なシャンプー |
外耳炎 | 垂れ耳、湿気、耳毛 | やや高い | 耳の臭い・かゆみ・赤み | 耳掃除・乾燥 |
椎間板ヘルニア:ダックスフンド最大のリスク
ダックスフンドの病気のなかでも発症頻度・重症化率ともに最も高いのが「椎間板ヘルニア」です。
背骨のクッション役である椎間板が変性・突出することで神経が圧迫され、痛みや麻痺を引き起こします。早いと生後2~3年で発症するケースもあります。
- 胴長短足体型の犬種で圧倒的に多い
- ソファや階段のジャンプ、過度な運動、肥満が発症リスクを高める
- 症状が進行すると歩行不能、排泄障害に至ることも
肥満と生活習慣病
ダックスフンドは「太りやすい」体質でもあります。食事の与えすぎ、間食やおやつの多用、運動不足はあらゆる疾患の入り口です。
肥満は椎間板ヘルニアだけでなく、糖尿病・心疾患・関節障害のリスクも高めます。
- 腰のくびれがない
- 上から見て胴体がずん胴
- 歩くのが遅くなった
- 呼吸が荒い
- 体重が標準より10%以上増加
ひとつでも当てはまれば、生活習慣の見直しが必要です。
歯周病・口腔疾患
ダックスフンドは歯が密集しやすく、歯石や歯垢が溜まりやすい犬種です。
歯周病は進行すると全身性疾患(心臓・腎臓など)を引き起こすため、日々のデンタルケアが必須です。
ケア不足で起こりやすい症状 | 進行時のリスク | 予防・ケア |
---|---|---|
口臭、歯茎の赤み、歯石 | 歯の脱落、内臓疾患 | 毎日の歯磨き、動物病院の健診 |
皮膚病と被毛のトラブル
被毛の密度や皮膚の薄さもダックスフンドの特徴です。特にアレルギー体質や湿気の多い環境では、皮膚病(アレルギー性皮膚炎・脂漏症など)が多発します。
症状 | 原因 | 対策・予防策 |
---|---|---|
かゆみ、フケ、脱毛 | アレルギー、ノミダニ、乾燥 | アレルゲン除去、清潔、定期的なシャンプー |
外耳炎・耳の病気
ダックスフンドの垂れ耳は湿気や汚れがこもりやすく、外耳炎のリスクが高いです。とくに春・秋や梅雨の時期は、耳の臭いや痒みを見逃さず、早めのケアが重要です。
症状 | 原因 | 対策・予防策 |
---|---|---|
耳を掻く、臭い | 湿気、耳毛、外耳炎 | 月2回の耳掃除、入浴後はしっかり乾かす |
まとめ
ダックスフンドの病気リスクは「体型」「生活環境」「ケア習慣」の3つが複雑に絡み合っています。
各疾患の特徴を正しく知り、日常から少しずつ意識と行動を変えていくことが、健康寿命を大きく左右します。
次章以降では、椎間板ヘルニアや遺伝性疾患、家庭ケアのノウハウをさらに詳しく解説します。
椎間板ヘルニア。ダックスフンド最大の脅威

ダックスフンドの健康管理で最も重要なのが「椎間板ヘルニア」対策です。
発症率は小型犬のなかでトップクラスであり、発症すると生活の質(QOL)を大きく損ないます。
多くの飼い主が「椎間板ヘルニアの予防」「ヘルニアの症状」「椎間板ヘルニアの手術費用」などのキーワードで情報収集をするのも、深刻なリスクだからこそです。
この章では、他犬種とは異なるダックスフンド特有のヘルニア事情、発症プロセス、治療や予防の最新情報まで詳しく解説します。
ダックスフンドの椎間板ヘルニアとは
椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が変性し、ゼリー状の中身が飛び出すことで神経を圧迫する病気です。
胴長短足の骨格は、そもそも背骨への負荷が大きく、わずかな段差やジャンプ、抱き上げ方の失敗、肥満によってもリスクが高まります。
発症年齢 | 好発犬種 | 主なリスク要因 |
---|---|---|
2~8歳 | ダックスフンド | 胴長短足、肥満、段差、遺伝 |
※高齢期も要注意 | ペキニーズ、コーギー | 加齢による椎間板変性 |
椎間板ヘルニアの症状と進行パターン
椎間板ヘルニアの初期症状は「歩行がぎこちない」「抱っこを嫌がる」「背中を丸める」「元気がない」などです。
重症化すると「後ろ足を引きずる」「立てなくなる」「排尿・排便障害」へ進行します。発症から重症化までのスピードが速いことも特徴で、早期発見・早期対応が予後を左右します。
椎間板ヘルニアの重症度グレード分類
グレード | 主な症状 | 治療の選択肢 |
---|---|---|
1 | 痛みだけ | 安静・投薬・生活改善 |
2 | 歩行がふらつく | 内科治療・場合により手術 |
3 | 後肢の麻痺・自力歩行困難 | 手術・リハビリ |
4 | 完全麻痺・排尿排便不能 | 緊急手術・長期リハビリ |
治療法と日常生活での予防対策
ダックスフンドの椎間板ヘルニアは、早期発見・グレードに応じた適切な治療が肝心です。
内科的治療(安静・鎮痛剤・ステロイドなど)で改善する例もありますが、重度の場合は手術が必要となります。リハビリや再発予防も長期戦です。
- ジャンプ厳禁:ソファやベッドにはスロープ設置。階段は使わせない
- 正しい抱き方:胴体を水平に両手で支え、背中への負担をゼロに近づける
- 肥満防止:体重管理と定期運動で椎間板の負担を減らす
- 滑り止め設置:フローリングにカーペットやマットを敷いて滑り防止
- 家具の配置を工夫して段差を減らす
- 抱き上げは必ず「前脚~お尻」まで両手で支える
- 肥満傾向ならフードを低カロリータイプに
- 痛みや歩行の異常は即日動物病院へ
椎間板ヘルニアと一生つき合うために
一度発症すると、完治しても再発リスクが残ります。日常の観察と予防、獣医師との連携が最も大切です。「ダックスフンド ヘルニア 再発」もよく検索されるキーワードであり、油断せずケアを続けることが健康寿命を延ばすポイントです。
遺伝性疾患・生活習慣病とシニア期のリスク

ダックスフンドの健康リスクは、椎間板ヘルニアだけではありません。「ダックスフンド 遺伝病」「ダックスフンド 老犬 病気」「ダックスフンド PRA」などのキーワードで多くの飼い主が情報収集するように、遺伝的な体質や高齢化にともなう疾患も無視できない現実です。
この章では、ダックスフンドに特徴的な遺伝性疾患、生活習慣病、シニア期特有の病気や予防策について詳しく解説します。
進行性網膜萎縮症(PRA)
ダックスフンドで発症例が多い遺伝性の目の病気が「進行性網膜萎縮症(PRA)」です。網膜の細胞が徐々に死滅し、やがて視力を失います。
初期は夜間の視力低下や物にぶつかることから始まり、進行すると失明します。PRAは遺伝子検査で早期発見が可能です。
てんかん
脳の異常放電による発作を繰り返す「てんかん」も遺伝性疾患のひとつ。発作時はけいれん、意識喪失、よだれ、筋肉のこわばりが見られます。
突然発症するため、発作が起きた場合は動画記録・受診が重要です。
主な遺伝性疾患一覧
疾患名 | 主な症状 | 早期発見・予防策 |
---|---|---|
進行性網膜萎縮症(PRA) | 視力低下、失明 | 遺伝子検査、早期の眼科検診 |
てんかん | けいれん発作、意識喪失 | 症状観察、動画記録、獣医相談 |
骨形成不全症 | 骨折しやすい、歩行困難 | 子犬期の成長観察、定期健診 |
生活習慣病・内臓疾患
ダックスフンドは長寿化とともに「心臓病」「腎臓病」「糖尿病」などの生活習慣病も増加しています。特に高齢期にはこうした疾患が複数重なることも珍しくありません。
病名 | 代表的症状 | 予防・ケアのポイント |
---|---|---|
心臓病 | 咳・呼吸困難・疲れやすい | 塩分控えめの食事、体重管理 |
腎臓病 | 水をよく飲む・尿量増加 | 低タンパクフード、定期検査 |
糖尿病 | 体重減少・多飲多尿 | 食事と運動の徹底管理 |
シニア期に増える疾患とQOL維持
10歳を超えたあたりから、ダックスフンドは「認知症」「がん」「関節炎」などの高齢期特有の疾患リスクも高まります。歩行困難や夜鳴き、混乱、食欲低下、性格変化などが見られた場合は早めに対策を講じましょう。
- 適度な運動とストレスのない環境づくり
- 体重・食欲・排泄の変化を毎日チェック
- 早期の健康診断・血液検査・超音波検査の実施
ダックスフンドは遺伝的疾患や高齢期特有の病気も多い犬種です。日常の観察と早期受診、生活習慣の見直し、家族みんなで健康を守る意識が、長寿とQOL向上のカギとなります。
家庭でできる健康チェックと予防のルーティン

ダックスフンドの健康を守るうえで、日々の小さな観察と予防習慣の積み重ねが非常に重要です。「健康チェック」「予防」「病気のサイン」などのキーワードが検索されるように、家庭で気づける異常の早期発見が病気の進行を防ぐ最大の武器となります。
この章では、飼い主が毎日できるチェックリストと予防の工夫を紹介します。
日々の健康チェックポイント
ダックスフンドは些細な変化が病気のサインである場合も多いです。毎日チェックするべきポイントを明確にし、早期対応につなげましょう。
チェック項目 | 観察ポイント | 異常のサイン例 |
---|---|---|
歩き方・動作 | ふらつき、ぎこちなさ、痛がり | 歩行が遅い、ジャンプを避ける |
食欲・飲水 | 食べる量、飲水量の変化 | 急な食欲低下、多飲多尿 |
体重・体型 | 触った感触、腰のくびれ、体重推移 | 体重急増・減少、ずん胴、やせ細り |
被毛・皮膚 | 毛艶、フケ、脱毛、かゆみ | べたつき、赤み、舐め壊し |
耳・目・口 | 臭い、赤み、涙やけ、口臭、歯石 | 耳の臭い、目やに、歯茎の赤み |
排泄 | 便・尿の色、形、頻度 | 血尿、軟便、下痢、便秘 |
家庭でできる予防のルーティン
毎日のケアがダックスフンドの健康維持には不可欠です。予防習慣をルーティン化することで、大きな病気を未然に防げます。
- 体重・食事管理:毎日同じ時間・同じ量で給餌。おやつは控えめに
- 歯のケア:毎日の歯磨きと月1回の動物病院での口腔チェック
- 被毛と皮膚の手入れ:週2~3回のブラッシングと月1回のシャンプー
- 耳掃除:月2回を目安に専用クリーナーでやさしく
- 爪切り・足裏の手入れ:2~3週間ごとに実施
- 散歩・運動:無理のない範囲で毎日続ける
異変に気づいた時のアクション
普段と違う様子が見られたら、「様子見」ではなく早めに動物病院へ相談するのが鉄則です。
病気は早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。
まとめ
家庭での観察とケアを徹底することで、ダックスフンドの多くの病気を未然に防ぐことができます。
「何かおかしい」と感じたら早期対応――これが健康寿命を伸ばす最大のコツです。
まとめ|ダックスフンドと健康に暮らすために
ダックスフンドはそのユニークな体型と愛嬌で多くの家庭に幸せを運んでくれる一方、他犬種以上に“健康リスク”と常に向き合う必要がある犬種です。
本記事で解説した「椎間板ヘルニア」「肥満」「歯周病」「皮膚病」「外耳炎」「遺伝性疾患」などは、ダックスフンドと暮らすうえで必ず知っておきたいテーマです。
健康管理のコツは、毎日の小さな観察と予防の積み重ね。
体重・体型・動作の変化や、食欲・排泄・被毛・耳・口腔の状態まで――「昨日と違う」と感じたら早めに対策する姿勢が、愛犬の健康寿命を大きく左右します。
また、シニア期には生活習慣の見直しや、心臓・腎臓・認知症といった新たなリスクにも備える必要があります。
病気や加齢は避けられませんが、早期発見・早期治療、家庭でできるケアの徹底、そして専門家(獣医師)との二人三脚で“最適な健康管理”が可能になります。
ダックスフンドと一緒に、健康で明るい毎日を送るために――
今日からできる予防とケアを続け、家族みんなで見守っていきましょう。